香港 国家安全法 解説付き全文和訳 第六章

第六章 附则/第六章 附則

※日本法では本則中の雑則にでも置かれる規定と附則に置かれる規定が、混在している印象。

 

第六十二条 香港特别行政区本地法律规定与本法不一致的,适用本法规定。

第六十二条 香港特別行政区当地の法律規定と本法が一致しないときには、本法を適用する。

本法の規定と香港法の規定が異なる場合には本法の規定が適用され、香港法の規定の適用が排除される旨の規定。香港特別行政区立法権に対する重大な侵害。

 

第六十三条 办理本法规定的危害国家安全犯罪案件的有关执法、司法机关及其人员或者办理其他危害国家安全犯罪案件的香港特别行政区执法、司法机关及其人员,应当对办案过程中知悉的国家秘密、商业秘密和个人隐私予以保密。

  担任辩护人或者诉讼代理人的律师应当保守在执业活动中知悉的国家秘密、商业秘密和个人隐私。

  配合办案的有关机构、组织和个人应当对案件有关情况予以保密。

第六十三条 本法に規定する国家安全に危害を加える犯罪案件を処理する関連する司法・行政機関およびその人員またはその他の国家安全に危害を加える犯罪案件を処理する香港特別行政区の行政・司法機関およびその人員は、案件を処理する過程で知りえた国家秘密・商業秘密と個人情報の秘密を保たなければならない。

弁護人または訴訟代理人を担当した弁護士は業務を執り行う中で知りえた国家秘密・商業秘密と個人情報を保守しなければならない。

共に案件を処理する関連する機関・組織と個人は案件と関連する状況について秘密を保持しなければならない。

1項は、国家安全に危害を加える犯罪に関する職務を行う執行機関及び司法機関並びにこれらの人員に秘密保持義務を課した規定。職務に従事する人員のみならず機関にまで秘密保持義務を課している点が特徴的。公務員については既存の法令で秘密保持義務が課されていると思われるので、確認的な規定。2項は弁護人等の守秘義務に関する規定だが、1項と同様、確認的な規定と考えられる。3項はその他の関係機構、組織及び個人の秘密保持義務に関する規定。

 

第六十四条 香港特别行政区适用本法时,本法规定的“有期徒刑”“无期徒刑”“没收财产”和“罚金”分别指“监禁”“终身监禁”“充公犯罪所得”和“罚款”,“拘役”参照适用香港特别行政区相关法律规定的“监禁”“入劳役中心”“入教导所”,“管制”参照适用香港特别行政区相关法律规定的“社会服务令”“入感化院”,“吊销执照或者营业许可证”指香港特别行政区相关法律规定的“取消注册或者注册豁免,或者取消牌照”。

第六十四条 香港特別行政区が本法を適用するとき、本法に規定する「有期懲役」「無期懲役」「財産没収」と「罰金」はそれぞれ「監禁」「終身監禁」「犯罪所得の没収」と「罰金」を指し、「労役」は香港特別行政区の関連する法律規定の「監禁」「労役センター」「教導所に入所する」を参照し適用し、「管制」は香港特別行政区の関連する法律規定の「社会サービス令」「少年院」を参照し適用し、「許可証または営業許可証の取り消し」は香港特別行政区の関連する法律規定の「登録もしくは登録免除を取り消し、または営業許可証取り消し」を指す。

罰則規定を中心とした、香港で本法を適用する際の読替規定。これ以外にも、本来であれば香港で本法を適用する際に読替えが必要な規定は、枚挙にいとまがない。罰則については、特にその重要性が意識されたものか。

 

第六十五条 本法的解释权属于全国人民代表大会常务委员会。

第六十五条 本法の解釈権は全国人民代表大会常務委員会に属する。

本法の解釈権は全人代常務委員会に属する旨の規定。憲法67条4号と同旨の規定を確認的に置いただけであり、本来は不要。基本法158条1項についても同様だが、同条2項・3項の解釈権の授権との関係で、1項なしで2項から書き始めるとわかりにくく唐突な印象があるか。本法では全人代常務委員会の解釈権をあえて明記する意味はない。なお、全人代常務委員会の解釈権とは関係なく、香港の裁判所は裁判において国安法の解釈・適用を行うことができ、同様に香港の行政機関・立法機関、国家安全維持委員会等も、それぞれの職責に応じて同法の解釈を行うことは当然に可能。

 

第六十六条 本法自公布之日起施行。

第六十六条 本法は公布の日から施行する。

本法は公布日(6月30日)から施行する旨を定めた規定。法律施行に伴う組織の新設、関係規定の整備に時間を要することから、本来であれば各規定ごとに必要な準備期間を設けるべきであり、大いに問題のある規定。